本人の挑戦を見守る

先日のブログ『「少数派」としての生きにくさ』では、普通に合わせ続けることのデメリットを書きました。
ですが、これはあくまでも親や支援者など“周りが”普通を期待する、という話です。

 

本人自身が、いわゆる「普通」とされる進路や生き方を目指したい場合、周りは見守ることになります。

中高生くらいになると、将来の進路を具体的に考え始めます。

そのとき、周りから見て無謀だと思える道を、本人自ら選ぼうとすることがあります。


例えば、以下のようなことです。

 

中学校は不登校だったが、全日制の高校を受験する。

勉強で忙しい進学校に入学する。

土日にも練習がある部活動に入部する。

県外の大学に出ていく。

障がい者雇用枠ではなく、一般の求人で働く。

障がいから苦手とされる職種の仕事に就く。



診断(または告知)されないままで来た人だけではありません。

 

早期に診断されて、理解と配慮を受けながら育って、障がいの告知や手帳の取得が済んでいる人にもみられます。

 

すくすく育って来たからこそ、前向きに「挑戦したい、頑張りたい」と未来の可能性を追い求めるのだろうなと思います。

 

 

そもそも、中高生から20代半ば頃までは、発達障がいに関係なく、あれこれ試して経験を積む年齢です。

 

自分が何に向いているか、最初からわかっている人はとても少ないです。

 

さまざまな試行錯誤や紆余曲折の経験があって、自分自身が何にやりがいを感じ、社会貢献ができるのか、また限界はどこまでなのか、を知っていくのです。

 

 

そういった若さゆえの勢いや無鉄砲さに加えて、発達障がいの特性があるために、将来のイメージがより持ちにくくなります。


未経験な事柄を想像しにくいです。

客観視の苦手さもあります。


交流している他者が少ないため、あまり情報が入って来ません。

友だちや先輩など他の人がどうしているか、自ら尋ねて情報を収集することが苦手です。


こういった特性が重なり合い、「普通」とされる進路が、自分には難しいかもしれない、とは思わないのです。



周りがよかれと思って反対しても、他者の考えの想定しにくさから、意図が伝わりにくいかもしれません。
それに、他者に勝手に「難しい」と決めつけられるのは悔しいですものね。

一見「障がい」を認めていないように見えますが、そういう訳ではありません。


どんな道が向いているのか、諦めて別の道を行くかは、本人自身が挑戦して、経験して、納得していくことなのです。

 

 


というわけで、本人が希望した進路は、例え無謀に見えたとしても、周りは見守るしかないです。

 

情報提供はします。(口頭でなく、視覚的な情報で確実に。)
求められたら、やり方を教えたり、一緒に考えたりもします。


失敗OK、やってみての方向転換もOKという確認もします。

反対意見があれば、その理由も含めて伝えるのは構いません。(なるべく冷静に)

味方であること、いつも応援していること、困ったらSOSを出してほしいこと、を言葉にして伝えておきます。


そして親御さんは、原則、介入や代行はしない方がいいです。

進路に関する諸々の手続きや連絡は、本人に任せるようにします。

わからないことは、学校の担任や、進路担当の先生などに自分で直接尋ねます。
クリニックの主治医やカウンセラー、福祉や就労の相談機関に訊いてみるのもいいかもしれません。

親御さんが相談にのることより、外につなげていくことを意識します。

 

また、家事やお金など、親からの援助と限界(内容、金額、期限)を具体的に予告しておくこともコツです。

 

本人が決めた道ですから、本人の主導と責任で進めていくのです。



とはいっても、現実的には、本人のタイプや経験の程度、親子関係、支援サービスの利用状況、相談できる人や場所の有無、等々によって、どこまで親が手助けするかは個々で変わってきます。

大事なのは、「あなた自身の人生のことだから、苦手なことは手伝うけれど、自分で考えて決めることだよ」を、本人と共有できているかだと思います。

 


できれば、小学生頃から少しずつ、自分がしてみたいことを、計画や事後処理も含めて自分で考えて決めて実行する経験を、段階的に積み重ねておけるといいです。



本人の「普通」を目指した挑戦は、発達障がいについて詳しく学んだ親御さんほど、心配が尽きないと思います。

社会の理解の乏しさや、公的な支援制度の少なさを知れば知るほど、将来への不安は大きくなります。

なるべく目の届く範囲にいて、ムリせず、傷つかず、安全な環境で生きてほしいと願うのは当然です。



けれど、本人にとってモチベーションが高いことなので、チャレンジする経験を通じて、生活やコミュニケーション面でのさまざまなスキルが身につきやすいです。

 

と同時に、苦手さを痛感し、「障がい」に向き合わざるを得なくなることも経験するでしょう。


でもそれは、自ら対策しようと工夫すること、人に相談する意義や、支援サービスの必要性を実感することにつながり、実際的な自己理解に到達していくのです。

 


ですので、できるサポートをしつつ、見守ってみて下さい。


きっと、周りの想像を超えて、自分のしたいことに邁進し、苦労もいとわず、たくましく生きていく姿を見せてくれるのではと思いますよ。

 

 

 

※ここに書いたことは、これまでの実践経験から得た知恵みたいなもので、研究による検証などは行っておりませんし、今後変わりうることもありますので、そのつもりでお読みください。

 

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