『強み』を見つけるには

ご無沙汰しております。
お知らせばかりだったこのブログ、ものすごく久しぶりに具体的な支援について書いてみようと思います。

今回のテーマは、ご本人さんから「自分の強みを見つけたいがどうすればよいか」と質問されて、回答した内容を元にしています。

 

 

1.『強み』という言葉の意味

発達障がい支援において、「強みを生かす」とよく言われます。

私もよくそうお話します。

 

しかし、この『強み』という言葉、「強い」という用語だからでしょうか。

本人や、場合によっては、家族や支援者も、下記(A)のようなイメージで受け取っているようです。

              

 (A)得意・才能・優れている・秀でている・抜きんでている…


つまり、他者と比べて非常に優れている部分、という捉え方です。
そこには、ものすごく好き、熱心に追求する、長年続いている、という意味合いも含むかもしれません。

  

ですが、専門家の立場では、『強み』という言葉は(A)だけでなく、以下の(B)の意味もひっくるめて広く使っています。

 

B)苦もなくこなせる・やっててイヤではない・ストレスフリーに取りかかれる・当たり前に続けられる・そこそこ人並みにできる…


他者と比べて、というよりも、本人の中の強弱として捉えています。
つまり、凸凹の「凸」の部分ですね。

また、凸のでき方は平均レベルまで達していることと、そうでないことも含みます。



少し脱線しますが、発達障がいを説明するとき、偉人や有名人を例に挙げることがあります。

 

けれど、とても酷なことかもしれませんが、本人の中では得意なことでも、同世代の他者と比較して、同じようにできないことが、現実的にはとても多く見られます。

(ということを本人さんが残念そうに語られる場合もあります。)

なので、励ましのつもりで、本人や家族に「発達障がい≒優れた才能がある」と話すことは、かえって傷つけたり、理解してもらないと受け取ったりすることも、心に留めてほしいなと思っています。


お話を戻しますね。

 

(B)の強みは、本人にとっては当たり前なので、気づかないことが多いです。
イヤも好きも感情の大きな引っかかりがないので、スルーしてしまい、記憶に残らないのですね。

 

自分の(または支援している方の)強みを見つけたい場合は、(A)だけでなく、(B)を意識して探すことです。

日常を観察するだけでなく、時に他人から教えてもらったり、意識して他者と比較してみることも要るかもしれません。

 

 

この話を聞いたご本人さんは、「得意と苦手の中間があると気づきました」「今後探しやすいし、とっかかりになると思います」とおっしゃって下さいました。

 

 

 

2.自分に合う量や時間を見つける

 

強みを「種類」としてではなく、課題・作業の「量」や「時間」で捉えることで、(B)の強みが見つかることがあります。

 

ADHDで集中が長く続きにくい人だと、短期戦(すぐ終わること)の方がやりやすいかと思います。

例えば家事で、皿洗い10枚までなら集中できるとか、掃除を30分は続かないけど、5分だったら集中できる、などです。

 

苦手だと思っていても、少量や短時間だったらやりやすくなることがあるかもしれません。

合う量や時間を観察して、把握できれば、一度に使うお皿の量を10枚以内に減らす、5分やって10分休憩と細切れに予定を組む、などの対策を取ることができます。

 

 

3.作業の手順を分解する

 

苦手だと思っている作業でも、その手順を細かく分けていくことで、苦もなくこなせるやり方が見つかることがあります。

 

例えば《水筒を洗う》ことを、分解してみます。

①蓋を開けて部品を外す

②お茶の残りを捨てる

③本体の中を洗う

④部品を洗う

⑤すすぐ

⑥乾かす

⑦組み立てる

 

この中で、苦手な部分はどこで、どこはスムーズにやれるのかを探します。

苦手な部分について、手順を組み替える、苦手な手順を外す、使う道具を変えてみるなど、工夫してみることで、ラクにこなせるやり方が見つかるかもしれません。

 

あるご本人さんは、③本体の中を洗うのが、キレイに洗えてるかわかりにくくてイヤだけど、部品は洗えるそうです。

ですので、汚れが落ちやすく使い勝手のよい道具の使用をオススメしてみました。

 


2.と3.は、もしかすると皆さんのイメージしていた『強み』とは、少し違うと感じるかもしれません。

 けれど、「苦手」の中にある、「うまくいってること」に焦点を当てていくことも、「強みを生かす」ことに入るのではと考えています。

 

 

 

 4.役に立ちそうにないことに注目する

 

多くの方が、『強み』といえば、仕事や家事など、人に貢献したり、生産性のあることで探そうとします。

けれど、一見役に立たないことや、趣味や楽しみでの行動にも強みが隠されていることがあります。

 

例えば、私のことですが、若い頃「何と何は似ているなあ」と連想することが多かったのですが、何の役に立たない能力だな~と思っていました。

 

それが今は、障がい特性を例えや比喩で説明することに生かされ、参加者から「わかりやすい」と言われるようになっています。

自分でもまさかそうなると思ってなかったので、とても不思議な感覚です。

 

 

また、ダジャレを言うことが好きな本人さんがいて、家族から「しつこい」と怒られるそうです。 

けれど“しつこい”ということは自然と繰り返すこと、つまりラクに続けられる『強み』でもあります。

ダジャレがサッと言えるのは、同音異義語を見つけることが得意ということです。

定型発達者は文脈や状況で意味を判断しますが、発達障がい者はシングルフォーカスの特性により、文脈などの全体より音のみに注目して、同音に気づきやすい人もいます。

 

人は、同じ音を持つものを、面白い、惹かれる、畏怖を感じるところがあります。

広告のキャッチコピー、ラップの歌詞、忌み言葉(言霊信仰)などは、ほとんどダジャレですものね。

同音異義語に気づける能力には、何かしらのニーズがある、もしかしたら仕事になる可能性があるのです。

 

…とその本人さんに話しましたが、首を傾げていましたけどね(^^)

 

 

 

以上、『強み』の考え方と見つけ方をまとめてみました。

 

優れた才能とは限らない、ご自身(または支援している方)の『強み』をぜひ探してみて下さいね。



 

※ここに書いたことは、これまでの実践経験から得た知恵みたいなもので、研究による検証などは行っておりませんし、今後変わりうることもありますので、そのつもりでお読みください。

 

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