本人の「やりたい」を支えるには

青年期・成人期の発達障がい支援において、支援者が気をつけておきたいことがあります。


それは、彼らの「やりたい」という言葉には、時に「やらねばならぬ」が混じる場合があるということです。

おそらく、感情より理屈を優先しやすい傾向、完璧主義的な思考、予測の持ちにくさ、体調や時間の配分や調整の苦手さ、などの障がい特性が関係していると考えられます。


また、新しいことが苦手、慣れや習得に時間が必要、不登校、などから、育ちの中で経験不足になりやすいです。


そうすると、憧れやイメージはあっても、自分に適性があるかどうか、実体験による検証はまだまだこれからです。


身近で見聞きした情報のみで、大人や社会人とは“こうあるものだ”と思い込んでいることもあります。



そもそも、若さとはそういうものかもしれません。

よくもわるくも未熟さと勢いと可能性と憧れとがごちゃまぜになって進んでいく時期です。


ですので、実際は、「やりたい」か「やらねばならぬ」かを区別することはとても難しいです。




本人が「やりたい」というからと、周りが早急に事を進めていくと、ストレスや負荷がかかり過ぎて、心身ともに不安定になったり、うまくいかなくて脱落したりしてしまいます。



とはいっても、本人のやりたいと思っていることを、周囲がムリだからと制止するのはやめた方がいいです。


否定された、邪魔されたと受け取られたり、ごくたまに後から恨まれたりするなど、よい関係性を築きにくくなります。


もちろん、意見を言うことは構わないのですが、指示や強制に聞こえないような伝え方、が必須です。


例)

「これは提案の一つで、採用しなくても構わないですよ」

「その方向もとてもよいと思ったのですが、別の方法も思いついたので、ちょっと話してみてもいいですか」



結局、支援する側がやれることは、本人の「やってみたい」を尊重しつつ、詳細な情報提供と小刻みの目標設定を提示しながら、成功も失敗も含めて、経験と振り返りのサポートを地道に続けていくこと、なのでしょうね。



本人の「やりたい」が定まっていくには、自分で決めたことを自分なりに試行錯誤しながら取り組んで、そこそこうまくいったという経験を積み重ねてこそだと思います。


それには、長い時間が必要です。


だからこそ、支援者には、障がい特性と支援方略の熟知だけでなく、覚悟と根気、そしてその方の可能性を信じ続けること、が求められるのです。




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※ここに書いたことは、これまでの実践経験から得た知恵みたいなものです。研究による検証などは行っておらず、今後変わり得ることがありますので、そのつもりでお読みください。


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