本人がパニックになった時の、家族の対応についてよく尋ねられます。
パニックは障がい特性ではありません。
特性に合わせて、適切な環境や関わりがなされていないためパニックになるのです。
なので原則は、起こさずに済むように、基本的な支援を整えていくことです。
ただ、診断がわかっても、家族が特性理解や対応を身につけるのには時間を要します。
ですので、緊急避難的に、パニックへの対応をお話することがあります。
それと「パニック」という言葉について、自閉症・発達障がいの領域では、定義がちょっとあいまいだと感じています。
ここでは、わかりやすく説明するために、医学的な用語というより、日常的な「思考や感情の混乱状態」といった意味で使っていますのでご了承ください。
パニックになったときの表れ方は人それぞれです。
大声を出す、歩き回る、走り出す、物を壊す、自傷、他害、人に絡む、へりくつ、フリーズ、真っ白…etc.
フリーズやへりくつも、実はパニック状態なのですが、周りから気づかれにくいかもしれませんね。
主な誘因は、以下のことが多いです。
○体調不良や疲れの蓄積
○複数同時の情報処理
○急な変更や修正(予測外の出来事や相手の反応)
○過去の記憶のフラッシュバック …等々。
特に予測外のこと、本人の“つもり”と異なる状況では、パニックが起こりやすいです。
そのときの周りの対応です。
1.その場の安全状況を作る(本人も周りも)
まず、危ないものがあれば片付けます。
物の破壊、自傷や他害を阻止するのです。
周りが身の危険を感じるなら、逃げます。
時々、何とか解決してもらおうと家族(主に母親)に向かって来ることがあります。
思春期以降は、親より体が大きくなっています。
声や言葉遣いも荒々しく、恐怖感を語られる親御さんは多いです。
不穏な雰囲気を察知したら、すぐその場から離れること(別室、外など)をすすめています。
2.刺激しない
本人がパニックになると、周囲にいる人も緊張や興奮状態になります。
肩の力を抜いて深呼吸し、とにかく落ち着いて下さい。
基本、関わりNG!です。
声かけは、絶対にしません。
姿もなるべく見せないようにします。
困惑した声や表情でよりパニックがひどくなることあります。
可能な場合には、一人にしてください。
落ち着ける場所(カームダウンエリア)に移動してもいいです。(誘いは声かけでなく、指差しや絵カード等を見せます。)
ただ他者を巻き込んでのパニックの場合は難しいです。
なるべく早い段階で場を離れますが、難しいときは、黙っておくか、しゃべるにしても声を小さめに淡々とするようにします。
親や支援者は、何とかおさめようと必死に話しかけてしまいがちです。
ですが返って「火に油」になります。
私は「パニックになってしまったら、燃え広がった火事と同じです。とにかく逃げて、これ以上延焼しないようにするだけです」とお話します。
親として放り出すようで罪悪感を感じる方もいらっしゃいます。
けど、これはあくまでも一時的な対応です。
障がい特性や関わり方を学べば、パニックの頻度は必ず減っていきます。
3.落ち着くまで待つ
後は、ただ待つだけです。
落ち着いたら、いつも通りに過ごします。
外に避難した場合、1〜2時間程度で戻って、様子を伺ってみて下さい。
声はかけなくてもいいです。
クールダウンに必要な時間を測っておくと、今後の目安になるかもしれません。
4.その後の話し合いについて
これは、個々で検討した方がいいです。
でも決して無理はしないでほしいです。
本人は理由がうまく説明できないことがあります。
パニック時の記憶がない人もいます。
何で自分はこうなんだろうと落ち込む人もいます。
そもそもイヤなことは振り返りたくないものです。
「今度は暴れない」といった約束(トークンも含む)は、あまり効果がないと思います。
本人が話してくる場合は、傾聴して下さい。
(ここで内容を深掘りするかは、本人の希望と、サポートする側との信頼関係によります。話の聞き出し方や整理にはコツがあります。)
頻繁に起こるなら、よく観察して、記録しておくと、きっかけに共通点が見つかることもあります。
パニックを起こすのには、必ず理由があります。
繰り返しになりますが、起こさずに済むように、障がい特性の理解、及び前もっての支援が必須です。
そして、何より本人が、パニックにならざるを得ないくらい苦しんでいること、パニックになったことでより辛くなること、を忘れずにいたいと思います。
※ここに書いたことは、これまでの実践経験から得た知恵みたいなもので、研究による検証などは行っておりませんし、今後変わりうることもありますので、そのつもりでお読みください。
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