思春期までにやっておきたいこと

最近、思春期をテーマに研修依頼をいただく機会があり、もっと低年齢の保護者や支援者にも知ってもらいたいことなので、ちょっと触れておこうかなと思います。

発達障がいのお子さんにも、もちろん、思春期は訪れますけれど、大事なのは、幼児期から学童期の、地道な積み重ねだなあ...と思っています。 

 

ですので、できれば、学校に上がって落ち着いた小2~3くらいには、家庭の中で思春期が来ることを想定した生活づくりにシフトできるといいですし、もっと早くから始めても構いません。

 

思春期の特徴は色々とありますが、大きなものは、自我の芽生え、です。

「自分の力でやりとげたい!」という気持ちが強くなる分、親の言うことには、とにかく「反発」したくなります。

 

簡単にいえば、親の言うことをあまりきかなくなります。

内容の正しさはあまり関係ありません。「反発」が標準装備になります。

 

ただ、発達障がいのある方は、苦手なことも多いことから、普段の生活で、周囲からの指示や手助けが多くなりがちですよね。

 

朝起こすことから始まって、歯磨きしなさい、着替えなさい、何時までにご飯を食べてしまいなさい、忘れものはないの…!

学校から帰ってきてからも、宿題をしなさい、お風呂入りなさい、ゲームは何時まで、早く寝なさい、などなど、ついつい声をかけたくなるのではと思います。

 

実は障がい特性から、口頭で一つ一つ指示するだけでは、一連の動作を自力で行うことが身につきにくい脳の仕組みを持っています。

さらに、大人が代行していたら、これまた脳の仕組み上、視野が狭いため、目に入っていなくて、まったく覚えていないことも多いです。

つまりは、定型発達のお子さんのように「子どもの時に何もしていなくても、大人になったらするようになる」ことが期待しにくいのです。

 

なのに、思春期になれば、親の声かけを嫌がるようになります。

かといって本人に任せていても、なかなかうまくいかなかったり、失敗続きだと回避することにもなります。

 

だから、視覚支援が必要なんですね。

言葉が分かっていても、一つ一つのやることは知っていても、複数の事柄について、何からどの順番で、どういう時間配分でとりかかり、途中で順番を入れ替えたり、早めたり省いたりして進めていくとよいのか、つまりプランニングが非常に苦手です。

 

その苦手さを補うのが、視覚支援(スケジュールや手順書、計画書など)です。

 

ですので、思春期までの幼児期~学童期には、家庭でぜひ、

①生活習慣や家事、予定やお金の管理などの一連の流れを、

②視覚支援を活用して

③自分一人の力でやりとげる体験を積むこと

を取り組み、大人が声をかけずに生活を送れるようになれるとよいなと思います。

 

『勉強』や『コミュニケーション』を学ぶ場は、大人になっても外に色々ありますが、生活習慣や家事スキルを直接、それも実生活に即して教えてくれるところはほとんどありません。(成人支援の現場で、よく尋ねられました。代行業はありますけどね。)

暮らしというプライベートな空間に、他人が入りにくいことも大きいですし。

 

だから、親のやることを真似たがったり、指示や提案に素直に応じてくれる学童期までが教えるチャンスなのです。

そして、これらは一度身につければ、一生涯使えるスキルになります。

 

それに、自分でやり遂げることによる達成感と、家事をすると誰かの役に立つという満足感が得られる、という心理的な効果があります。

私たちも、おいしい料理を作れた、部屋をきれいに掃除できた、車で見知らぬ街まで運転した、という体験から得られる達成感は大きいですよね。

プラス感情体験を積み重ねると、精神的な安定や自信につながり、自己を制御する力にもなります。

 

もっと言えば、家事スキル(例えば料理、そうじなど)は職業スキルに直結しますし、プランニングの力は、どの職業にも必要となってきますよね。 

 

そして、これらは、表出の支援(自己選択や自己決定)、自己理解や本人告知、障がい表明、自己権利擁護…の話にもつながっていくのですが、長くなるので、この辺で。

 

思春期以降の対応については、いずれどこかの機会で記事にできたらと思います。

 

 

※ここに書いたことは、これまでの実践経験から得た知恵みたいなもので、研究による検証などは行っておりませんし、今後変わりうることもありますので、そのつもりでお読みください。

 

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